July 10, 2007

セレクトセール考

ただいま北海道から帰ってきました。掲題にある通り、日本における最高峰のセールであるセレクトセールに参加してきましたので、思った事・感じた事などをレポートしたいと思います。

昨年、オータムセールに参加した時の総括は「オータムセールは決して売れ残りの馬達を投売りするようなセールではない」でした。そして、今回参加したセレクトセールの総括としては「無茶苦茶に恐ろしいセールである」となります。

例えが非常に難しいのですが、私が受けた印象は、「今まで通り、竹刀とかを持って、ワーワー、ギャーとか言ってチャンバラ遊びをしに行くつもりだったのに、現地に着いてみるといきなりマシンガンで撃ち合っていて、足元を見たら撃ちぬかれた人の脳みそが撒き散らかされていた」みたいな感じです。

一言で言ってしまうと「殺伐としている」のですね。「楽しい競馬」なんてものはそこにはなかったように思います。

今回セレクトセールに参加するにあたって、私には3つの大きな目的がありました。

1.Noreasterの種付け相手である Dubai Destinationの産駒を見る。
2.太郎さんが馬を買うそうなので、それのサポートを行う。
3.白井調教師と会えたら、色紙に「最強」の2文字とともにサインを書いてくれるようせがむ。

これらがその目的なのですが、まぁ実質的には、2の要件が9割を占めるという事前認識でした。当初は、馬選びに関しては白井調教師がしてくれるだろうから、私は適当に遊んでればいいやと思っていたのですけど、なんか太郎さんたら「適当に見て決めましょうよ」とか怖い事言ってるので、まぁAUで一緒に馬を共有している仲間として出来るだけの事はしましょうということになっていたのです。

その馬選びに関しては、事前調査の段階で候補馬を相当数に絞っていました。といいますか、基本方針として「社台・ノーザンの馬は外す」という結論に達していたので、その段階でかなり候補馬が減ってたのですよ。

まぁねぇ・・・これいつも通りの海外のセールなら、こんなBlogを見ている関係者なんていませんから好き勝手書けるんですけど、ちょっと日本のセールだとそうもいかず、これだけ書くとアレなんで理由を書いておきますと、社台・ノーザンって結局のところ「凄すぎる」んですよね。

AUでの馬の動きを見ていて思うのは、「彼らの組織的相馬眼はほぼ完璧で、値付けに関してまず外さない」という事です。つまり、AUというアウェイであっても外さないのに、日本というホームグラウンドで、しかも産まれた頃から毎日見ているような馬達の評価で、たかだか一日や二日ふらっと訪れて見ただけの私たちが適うはずもないと・・・こういう事になるわけです。まぁそれは当たり前の話でもあるのですけど、とりあえず現実は、「良い馬を安く買える道理が無い」という事になるわけで、また、彼らはクラブに良質の馬を卸さなければならないし、それより何より、値段が気にいらなければ(思うような値段まで上がらなかったら)自分たちで所有すれば良いだけですから、どの方向から論理的な思考をしたとしても導き出される結論は、「良い馬を他のバイヤーと競り合って、高値で落とす」の選択肢しか残っていないということになるんですね。

勿論、数億単位で予算が組める人にとっては、良い馬を手にいれるというセール本来の目的に沿った行動をすればいいので、上記のような状況であっても何の問題もないのですが、私たちがおかれている状況はそうではないので、ちょっと変化球で勝負せざるを得ないという事なのです。まぁ、アレですよ、「予算」ってのは言ってみれば直球のスピードみたいなもので、変な小細工とか関係なしに勝負にいけるといいますか、要するに例えば「一億円の馬」という篩にかければ、ほとんどのバイヤーはそこでハネられるわけで、問答無用の豪速球というのは非常に勝ちやすいわけです。そうじゃないなら、外角の低めにスライダーを投げるしかないと・・・。

まぁそんなわけで、「良い馬とは分かっているのに、多少安くても売らざるをえない」と思われるダーレーの上場馬を主体にして、更に高い買い物になるのがほぼ確定的なので、血統という絶対価値が残る「良血の牝馬」というリスクヘッジをかけようというのが熟考した上での事前構想だったのですね。

んー、話が長くなってきましたが、今日はまだまだ書かないといけない事があります(笑)。

実はですね、今回、私はセールだけでなく、セレクトセール10周年を記念したレセプションパーティにも参加してきたんですよ。

「なんでお前が参加してんねん!」ってツッコミが入りそうなのですけど、太郎さんが昨年たまたま一頭買ってた関係で、招待状が日本競争馬協会から届いたらしく、ちゃっかりそれに私も便乗したというのが参加の次第でございます(笑)。まぁ客観的に見れば「場違い、ここに極まれり」であって、普通はそんなのに参加する会社員なんていないわけなのですけど、私にしてみれば、いくらVIPがそろうとはいえ、競馬における重要な要素「馬券」で私の右に出れる人なんて関係者でもそうそうはいないはずで、「宝塚記念で儲けた額は多分俺がナンバーワンだから」みたいなノリで考えてたのですね(笑)。とはいえ、ちゃんとYシャツからズボンからネクタイまで新調して、失礼さえ無ければ大丈夫だろうという慎重策も取っていたのですけど。

でもねぇ・・・このパーティがねぇ・・・ヤバかったんですよ・・・。

いや、というかですね・・・パーティ自体は着飾った女性がシャンパンとかをついでくれたり、出ている料理が美味しかったりして、おそろしく洗練されたものでした。参加されていた皆さんも、当然のように、にこやかに談笑してらしたんですけど、それら視覚から入ってくる和やかな情報と、肌で感じる空気に違和感がアリアリだったんですよね・・・。視覚から入ってくる情報は「ほのぼの」、肌で感じた空気はいっそ「殺気」と形容したいほどでした。一緒に参加した太郎さん、その彼女さんも「楽しいパーティだね」とおっしゃってましたし、そんな感じを受けたのは私一人みたいだったのですけど、私自身はこういう自分の第六感を大事に生きてきたというバックボーンがあるだけに、ホテルに帰ってからどうして自分がそう感じたのか考え込んでしまいました。

最初は「敷居の高さ」みたいなのを感じたのかなとも思ったのですけど、どうもそうでもなく、もしかすると興味本位でエアグルーブの仔を馬房から出して貰って生意気にも見たってのがマズかったのか等等かなり色々検証しました(笑)。パーティでは有名人が一杯いましたから私が知っている人ってのは当然何人もいらっしゃったのですけど、逆に私の事を知っている人なんているわけないでしょうし、そもそも余り他の人と話していたわけでもないんで、どうしてそういう違和感を感じたのかは未だに分からないんですけどね。まぁこれはまだ考え中なのですけど、この「殺気」という異様な感覚はセール初日へと続いていく事になります。

さて、長い話も佳境に差し掛かり、本日行われたそのセール初日の模様・・・。

とりあえず、購買候補馬は、朝の段階で34番ヴェルベットクィーン一頭に絞っていました。というか、この馬から受けるインパクトが強くて、なかなか他の牝馬を見にいく気になれなかったんですよね。一応、押さえとして、5月生まれということもあり早生まれの他の馬より見栄えで損している22番サファイヤコーストを「万が一安ければ」という条件で考えてはいました。あとは、まぁ52番のエアグルーブも明らかに他馬とは違うものを持っていたのですけど、これは御代からして一億円でしたから対象外という事になります。

とは言え、今回買うのは私ではなく太郎さんなわけで、自分の結論としては34とだけお伝えしてセールを見守っていただけなんですけどね(笑)。

セリ会場の周囲は、一大屋外レストランと化していて、そこで私も噂の豪華なタダ飯をいただいてから、散歩などもしてみたのですけど、しかし、やっぱり、どうも殺気立っているというか、あの空気はいったい本当に何なのだろうという感じでした。何かよく分からない違和感があったんですよねぇ・・・。

んー、まぁそれはいい加減置いておくとして、競りの結果の方を書きましょうか。既に速報も出ていますけど、34は5100万円で日本一の馬主さんが落札、太郎さんも3100までがんばったのですけど、競り負けという結果に終わっています。アンダービッダーでもなかったので、これは要するに「予算の割りには高望みしすぎ」という私の欠点を、そっくりそのまま太郎さんも被ったという事になります(笑)。

結果だけを見たら、「良い馬を安く買う」という方向性から思いっきり離れて、「良い馬を高値で買う」という普通の状況になったのですけど、んー、やっぱり素人には馬の購買っつーのは無理なのかもしれないです。結局、落とすところまで持っていけるかっていうと、絶対何かあって落とせないんですよね。馬を買う時ってのは、数千万円という大きなお金が動くだけに、慎重に進めないといけない面と、思い切りが必要な面とが隣り合わせなのですけど、競り直前の心理状況、情報戦などとあいまって、「正しい結論」を導くのは本当に難しいのです。

まぁ今回は、「馬の選別」はおそらく正解だったのでしょうけど、「値段読み」で大敗したってところが結論ということになるのでしょう。

競り負けた後の残り時間については、もう大してする事も無いので、なんちゃって競りでもして適当に落札額をあげて遊ぶしかなくなるのですけど、セレクトセールって購買登録者ごとに席まで決まっているみたいでして、それも出来るような状況ではありませんでした。なんかもう、ガチガチにセーフガードで固められているというか、規則正しいというか、私みたいな冷やかし客にとっては、正直面白くなかったとだけ最後に書いておきたいと思います。

んー、あとは香港ジョッキークラブが日本のセールで馬を買ったとか、他にもトピックはあるんですけど、「日本の競馬を支えている主要人物が勢ぞろいするセールは、そのプライドと欲望と、また様々な計算などが渾然と一体化した恐ろしいものであった」というのが、私の感想であり、結論といった感じですかね。

いや、本当に競馬を楽しみたいだけの半分以上ただの競馬ファンでしかない馬主がちょろっと行って、馬が実際に買えるようなセールじゃありません。まぁ、それで当たり前だという話もあるのですけど、私にはサマーセールぐらいが丁度良いって事なのでしょうね。

いや、本当に、もう全くの異次元空間でございました。でも、天上界って感じではなかったですな。一つ言えるのは、「私には合わない」って事なのでしょう。まぁ、しばらくは私が肌で感じた「違和感」とはいったい何だったのだろうかを考え続けたいと思います。


投稿者 Jyoukan : July 10, 2007 01:25 AM
コメント

いつも楽しく拝見しています。
セレクトセール、どうもお疲れさまでした。
今日以後は参加されないんですね。

私はテレビで拝見していたのですが(仕事しながらなので真剣には見られませんでしたが)、今回のセールは2000万円以下と3000万円以上に大きく価格帯が分かれているように思いましたが、2000万円以下でも結構よさげな馬が残っているなぁという印象でした。61番とか、76番、121番当たりなど。その当たりの価格帯のセリの雰囲気は、実際どうだったのでしょう?そこにも違和感はありましたか?

それと、dubai destinationは"当たり"でしたか?
テレビからも34番、83番は良さそうに見えましたが、いかんせん2頭しか見たことがないので一般的な話はよくわかりませんでした。

Posted by: nishi : July 10, 2007 09:45 AM

はじめまして。楽しく拝見しています。

思うんですけど、今年のセレクトセールは失敗に近くないですか? 高馬は今のところ少ないし、社台以外の牧場の馬は売れていないしで、セリとしての盛り上がりに欠ける印象があるんですが、どう思われますか?

そこで私なりに考えてみたんですけれど、

1 種牡馬の価値も含めての値段だからと称して高値で購入する馬主がいなくなった

2 セリに出てくる血統に既視感が漂う

3 社台以外の牧場がセレクションセールに行った

4 キングヘイロー産駒が少ない

5 関口さんが選挙に出た(笑)

などが理由ではないかと。セレクションセールの名簿も見たんですけれど、キングヘイローの子供はほんとに少ないですよね。庭先で売れちゃったんでしょうねきっと。

Posted by: らき : July 10, 2007 03:02 PM

6 主取りの価格が高すぎる

というのもあるような気がします。

Posted by: nishi : July 10, 2007 06:39 PM

自分の席で競らなければならないなんてルールはありませんよ。
私は自分の席で競ったこともないし、座ったこともほとんどありません。
競る場所は「戦略的有利な場所@企業秘密」です。(笑)

Posted by: くりげ君 : July 10, 2007 08:40 PM

皆さん、こんばんは。

>>Nishiさん
まず Dubai Destination産駒ですけど、AUでも種付け料の割りに評価の高い馬が多いので、少なくとも見栄えであったり歩様の良い産駒が多いという事はいえると思います。

ただ実際に走るかどうかはまた別の話でしょうね。まだ新種牡馬で産駒実績は無いわけですから。今のところは期待の高い新種牡馬という評価が妥当だと思います。

61番、76番、121番については実馬を見ていないのでコメントできないですね。

>>らきさん
盛り上がりがあったかという問いですが、これは何ともお答えのしようが無いといいますか、個人の主観によるといいますか、また立場の違いによっても変わるものですから、非常にコメントしづらいですね。

私は今回初めて参加してみてセレクトセールに対して、総合的に否定的な見解を持ちましたが、数億円を自由に馬に対して消費できる馬主層にとっては重要なセールであるという事実はこれからも変わらないでしょうし、印象というのは立場の違いによって変わるものだと思います。

本文では触れていませんが、他では社台とノーザンは基本的な方向性からして相当に異なる生産者であるという印象も持ちました。売れなかった失敗か?というと、そうでもないのですよ。

>>くりげ君
「俺は馬主をやめるぞ!ジョジョーッ!!」とおっしゃってたのに、ちゃっかり当歳の牝馬を買われていたくりげさん、こんばんは。

ご購買おめでとうございました。

まぁ席の問題もあったのですけど、「殺気」といいますか「妖気」といいますか、化け物連中が何かやってるなという感じで、全然面白くありませんでした。

まぁ、なんといいますか、「安馬で高馬に勝つ喜び」を説かれても、これまでは「ふーん」って感じだったのですけど、今回の経験でこれからは心から頷けるような気がします(笑)。


Posted by: 浄閑 : July 11, 2007 01:34 AM

違和感というのは,所詮は公開庭先取引だからじゃないのかな?
高額取引馬で(市)ついてるの,ほとんど居ませんからね.全然セールじゃないっつうの.
※そういう意味でフサイチ氏は偉い.
 支払い悪くて出禁くらっていた時期もあったようですけどw
※※さらに,それをブチまけて社台に干された白井師も凄い(白井最強w)

さっさとダーレーに引き続いて,クールモアに牧場でも北海道に持ってもらわないと社台寡占状態は変わらんでしょうな.
何となく,それでも社台が勝っちゃうような気がしてるんですけど.個人的に.

> 主取り価格が高い

今回,1歳は特に馬が集まらず社台以外の他牧場に拝み倒してセールに出して貰った経緯があるそうです.
ということは,セールに出したものの既に買い手の付いている馬(or付きそうな馬)は主取り価格が高かったのかも知れませんと妄想してみましたけどどうでしょうw

Posted by: kkk : July 16, 2007 12:38 AM

kkkさん、こんばんは。お返事遅れました。

最強スレによると、白井師は今年のセレクトセールでこうのたまわったそうです。

「クロフネが人気種牡馬になれたのは誰のおかげや?」

・・・

白 井 最 強

ちなみに、白井師と共に競りに臨んだ太郎さんは、「こいつと会わせたら何をしでかすか分からん」とでも思ったのか、私に白井師を紹介してくれることはありませんでした。

さて、当たり前の話ですけど、セレクトセールは「馬が高すぎ」ですね。ディープやアドマイヤムーンみたいなのも混ざってますけど、ほとんどの馬は維持費すら出てないのですから。

高額で落札された馬が後に折半所有ってのは、確かに買った後に誰と持とうと自由なのですけれども、3億で買っても4億として折半したら1億払って50%所有とか、後からいくらでも値段調整が出来るというのもまた事実なので、その辺りは「大人の事情」が絡む可能性があるのはご指摘の通りです。

とりあえず「貧乏人に用は無い」というセールである事を改めて認識できましたし、もう行く事は無いだろうなという印象です。

Posted by: 浄閑 : July 18, 2007 08:42 PM

今度は(次があるか不明ですがw)白井師に紹介してもらって,最強列伝のテンプレに入るようなビッグバンを期待します,
白 井 最 強

Posted by: kkk : July 21, 2007 01:46 AM